「はい、昴さん。これ、あげる」
子どもたちが帰ったあと、ソファーに腰掛けて一息ついた瞬間だった。隣からそんな台詞が聞こえてきたと思ったら、眼前に透明の小袋が現れた。金色のラインで縁取りされた赤いリボンが結ばれている。
「……これは?」
見つめた先のコナンは視線をあさっての方向に向けている。耳がうっすら赤い。
「見ればわかるでしょ? お菓子だよ。クッキー」
子どもたちが遊びに来てすぐの出来事が蘇る。今日はホワイトデーだから、と手作りクッキーをプレゼントしてもらった。本当はバレンタインデーの時こそしたかったのに、運悪く失敗してしまったのでリベンジをしたかった、のだそうだ。
いつも遊んでくれたり美味しいものを食べさせてくれてありがとう、と屈託ない笑顔を向けてくれたことが何よりも嬉しかった。
「さっきもらったよ、って言いたいんだと思うけど……あれは、みんなから、だから」
「つまり、これはコナン君個人のプレゼント、ということですか?」
小袋ごとコナンを引き寄せ、横抱きで膝に乗せる。最初は恥ずかしさからか抵抗されることも多かったが、だいぶ身を任せてくれるようになった。表情はまだまだひねくれているが。
「ほ、ほら。僕はみんな以上にお世話になってるから」
「あのプレゼント分では足りなかったと言いたいんですね?」
せっかく合った視線が再び噛み合わなくなってしまった。未だコナンの手に握られたままの袋をそっと傍らに置いて、首の変声機のスイッチを押す。
「……昴さん?」
音に反応して顔を持ち上げたコナンの両頬を包み込んだ。
「だが、妬けてしまうな」
「な、なんで赤井さんになるんだよ!」
「俺には何もないのか、ボウヤ?」
距離を縮めて、わざと囁く。
「な、何もないって、だって昴さんは赤井さんで」
「仮初の男にではなく本来の男で恋人に、という意味だが?」
頬からさらに熱が伝わってくる。全く、中身が高校生だと思うと余計に可愛くて仕方ない。
「じゃ、じゃあ、あのクッキーは赤井さんにプレゼント、したい」
「じゃあ、というのもアレだが……ありがとう。ありがたく受け取ろう」
思わず口の端が緩んだ。コナンが固く目を閉じるが、すぐに開かれる。何かを堪えているように見えた。
「だが、恋人としては物足りないな。もっと相応しいものを……もらわねば」
小さな唇に軽く触れると、すぐに意味を悟ったらしい。腕を振り払って逃げ、かけたところを抱き込んで阻止する。
「あ、あああかいさん! 明日も平日だから!」
「善処する」
「ら、蘭姉ちゃんに怒られるし!」
「どうにでもなるさ」
「先月も同じこと言ってたけど僕大変だったんだけど!?」
「人は学ぶ生き物だろう?」
じたばたと抵抗を続ける身体と声を無視して、クッキーを片手にリビングをあとにする。
「ボウヤから特別なプレゼントなんてもらったら、我慢なんてできるわけがないだろう?」
ベッドに横たえてそう囁くと、抵抗がぴたりと止まった。
