欲しくて欲しくてたまらない - 1/2

「……っま、って……も、おか、しくなる……!」
「おかしく、なれよ……」
「ひ、あ……ああぁ、う……っ!」
「もっと喘いで、気持ちいいってねだる姿、見せろよ……!」
「ト、モ……トモ……っ!」
 何も考えられない。
 言葉通りに、快楽だけが頭の中を支配していく。獣のように、追い求めてしまう。
 
 
『今度、連休あるだろ。その時泊まりでお前と出かけたい』

 先日、智友に真剣な顔でそうお願いされた。
 言われた時は普通に「いいよ」と頷いてしまったが、その後に優しく抱きしめられて、ようやく「泊まり」の意味を察した。
 恥ずかしさは、当然あった。
 けれどそれ以上に、幸せに思った。
 自分の本心を隠しがちな智友が「もう我慢しない」と宣言した通り、恋人に対しては素直に欲を見せてくれるのが特別な証にも思えて、独占欲を掻き立てられる。
 頷いて、智友の背中に腕を回した。
 素直に求められて、嬉しくならない恋人はいない。

  * * * *

「ラブホって、意外と普通なつくりしてんだな」
「確かに……普通のホテルと変わらないかも」
 回るベッドとか、スケスケのバスルームがあるとか、どことなくピンクな色でカラーリングされているとか、ここに来る前に智友と散々妄想しあったが、来てみればベッドがやたら大きい以外はそういったホテルと一見気づかない内装をしていた。初心者としてはありがたい。
 というか、高校生なのに意外とすんなり入れてしまったことには驚いた。
「あ、でもほら、見てみろよ」
 ベッド脇に向かった智友が、こちらを振り向いた。正方形の包みを指で挟み、ぴらぴらと振っている。
「そっ、それ……」
「さすが、ラブホだな」
 忘れていた緊張が、一気に戻ってきてしまった。
 ここに来るまでのデートも心臓の片隅が妙に脈打っているような心地で、楽しみたいのに全力では叶わない、なんとも中途半端な状態にあった。それに気づいていたのかいないのか智友は至って普通の態度で、やっぱり一歩先をいく彼に少し悔しくも感じたが……もはやどうしようもない。
 考えてみれば、泊まり込みのデートは初めてなのだ。
 しかもせっかくだからと智友の提案でラブホテルを宿泊先にする大胆ぶり。最初こそ普通にしようと拒否したのだが、しょんぼりした顔で「ダメか?」とねだられては、諦める以外の選択はできなかった。
 今回の智友は欲望に忠実すぎる気がする。
 いや、自分だって健全な高校生だし、定期的に肌を重ねる行為もしているから興味はあるけれど、そこまで大胆にはなれない。
「じゃ、まず風呂入らねえと」
 包みを元の位置に戻した智友は、いつもの調子で告げた。なんだか自分だけが翻弄されているようで、やっぱり面白くない。
「……勇気、なんだよそのふくれっ面」
 小さく吹き出した智友がこちらに歩み寄り、頬をなぞる。
「べっつに? お前ずいぶん余裕あるんだな〜って思っただけだから?」
 短い溜め息が聞こえたと思ったら、手を掴まれた。
「そんなわけないよ。……ほら」
 言いながら、自らの心臓の上に導く。伝わってくる心音は……想像以上に早い。思わず智友を見上げてしまった。
 余裕があると思っていた表情は、どこかばつが悪そうなものに変わっている。
「俺だって初めてここに来たんだし、緊張してるに決まってんだろ?」
 ああ、かっこ悪い。
 そんな言葉が聞こえた気がして、智友には悪いが……ほっとして、嬉しくなった。思わず背伸びをして、唇を寄せる。
「っ、勇気?」
「えへへ。俺は嬉しいってこと!」
 呆気に取られていた智友の顔に、不敵な笑みが広がっていく。手を強く引かれて、何倍も深いキスを返された。
 当然のように舌を差し込まれ、口内を余すところなく愛撫され、自分の舌と絡めることも忘れない。
「んっ……ふぁ、は……」
 互いの唾液から生まれる水音と唇を吸う音が鼓膜を遠慮なく震わせていく。頭に熱が溜まっていくと同時に身体の奥から甘い疼きも広がり、空いた手で智友の服をぎゅっと握りしめた。
「ト、モ……」
「お前、今すごく色っぽい顔してる」
「だって、トモが……」
 あんなキスをされれば、恥ずかしさや緊張など欲望で上塗りされてしまう。
 ――このひとに、早く愛されたい。せいいっぱい、受け止めたい。
 首筋に頬を擦り寄せる。たまらず吐き出した吐息は、細かく震えていた。
「……っ、お前の息、あつい……」
「トモ、はやく……」

 はやく、抱いて。