「モルガナ!」
「フギャッ!?」
いきなり名前を呼ばれて、眠りを妨げられた。思わず布団の上で立ち上がると、息を荒らげて天井を凝視している凌一が映る。
「お、おいどうしたリョーイチ。しっかりしろって!」
意識が現実に戻ってきていない。そんな表情だ。この様子は悪夢でも見て目覚めたという感じだろうが、名前を叫ばれた身としては気になって仕方ない。
「……モルガナ?」
ようやく凌一の視線がこちらを捉えた。布団の山まで移動して、頬をぺたぺたと叩く。
「大丈夫か? 悪い夢でも見たか?」
「……うん」
素直に頷いた凌一は端から手を伸ばし、頭をゆっくりと撫で始めた。伝わってくる明らかな震えに、さすがに心配を隠せない。
「モルガナが……どこかに行っちゃう夢、見たんだ」
「ワガハイが?」
「追いかけても全然捕まんなくて。思いっきり叫んだら、起きたみたい」
心配が恥ずかしさに変わっていく。いや、本人が至って真面目なのはわかっているが、こうもストレートに求められるとこそばゆい。「身体が痒い」とはこういう時に使うのだろう。
「よかった、夢で。モルガナいなくなったら落ち着かないし」
照れ隠しに毛づくろいなんぞを始めてしまう。なんでもいいから喋りもしないと落ち着けそうにない。
「大体、ワガハイがそう簡単にいなくなれるわけないだろ。ペルソナ能力がなくなっても戻ってこれたんだし」
「わからないぞ。だってしゃべる猫だし」
猫じゃねーし! といつものツッコミをすると、凌一は少しだけ笑った。ようやく気持ちが落ち着いてきたらしい。
頬をひと舐めすると、凌一の黒い双眸がゆっくりと覆われていく。間もなく、規則正しい寝息が場を満たし始めた。
「ったく……どこかになんて、行くわけないだろ」
ぺしっと、顎の辺りを軽くはたく。
「ワガハイの居場所は、もうここにしかないんだし」
もし凌一が、夢の中の自分と同じ行動を取ったなら、意地でも追いかけてやる。それくらいの気持ちはあるのだ。
「もう、くだらない夢なんか見るなよ」
いつもの場所で丸まろうとする動きを止めて、肩口まで移動する。
呼吸が変わらないのを確認してから、改めて身体を丸めた。
