あなたが悪夢を手放すまで - 3/3

「あれー? 笠原くん、もうエースくんを独占するのはやめたのかな?」
 サーバー棟へ向かう道すがら、眩しいくらいの笑顔を携えたジョーカーに出会った。
 正直、あまり長話をしたくない人物だ。よく勇気も振り回されているが仕方ないと思う。教師でも、彼に真っ向から立ち向かえるのは榊先生くらいしかいないかも知れない。
「……すみませんでした。勇気にも叱られましたよ」
 だから素直な対応をした。ジョーカー相手に下手な言い訳や誤魔化しは通用しない。「叱られた」という部分だけは、二人の秘密を守るためのちょっとした抵抗心のつもりだ。
「へえ、あの人畜無害で明朗闊達な勇気くんがねえ。その場面、僕もぜひ見てみたかったなー」
 明らかな棘を感じて、つきたい溜め息をこらえる。勇気との関係を悟りながら、ところ構わず独り占めしていたのが気に食わなくて仕方ないのだろう。
 ジョーカーを始め、本当に勇気は厄介な人達に好かれ過ぎている。
「そういうのは、俺がありがたく堪能させていただきますよ。これからも」
 わずかにジョーカーを睨みつけて、告げる。
 誰にでも親身になって接し、学園中を駆け回る天真爛漫な勇気を無理やり留めておくような真似はしない。それはある意味彼を殺すことと同義だし、「らしさ」が失われた姿は自分も見たくない。
 だが、恋人を前にすると無邪気さの代わりに表れる可愛さ、最近生まれつつある艶っぽさ、すべてを包み込むような優しさは他人に見せるつもりも、渡すつもりもない。少しでも脅かす者がいれば、身を挺して守ってみせる。
 勇気の懐は穏やかに波打つ海のようで、身を預ければいくらでも受け入れてもらえるけれど、甘えるだけでなく同じように支えていきたい。
「……ふーん。君、意外と独占欲強かったんだ」
「あんまり表に出しちゃうと、勇気をビビらせちゃいますから」
 面白いものを前にした時の笑みが、ジョーカーの唇に刻まれる。機嫌を損ねると面倒なのは変わらないから、結果オーライ……と思うことにしよう。
「ま、今回は珍しい理事長殿が見れたからよしとしてあげるよ」
 ジョーカーの足が動き出して、短く息をつく。これから仕事があるというのに、必要以上にエネルギーを使ってしまった。……勇気には私用で呼ばないようにと言われたが、ものすごく呼びたい。

「でも、今後勇気くんにまたつまんないことしたら、横からかっさらっちゃうから。覚悟しててねー?」
 
 
「もー、トモ! 大事な用だっていうから飛んできたのに、ただいてくれって何だよ!? 生徒会の仕事、途中だったんだぞ?」
「ごめん、マジごめん。今日だけにするから。あと一回抱きしめさせて」
「うー……わかったよ。何かトモぐったりしてるし、元気になるなら、いいよ」
 腕の中の恋人を守るために、とりあえずは少し本気を出すところから始めよう。

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