※『メインディッシュはデザートの後で』の続きになります。
『チョコレートの代わりは……俺だ』
その言葉に嘘偽りはない。もちろん今も気持ちに変わりはない。
けれど、いざ本番を迎えるとどうしても緊張で全身がガチガチになってしまう。
「……緊張してるんだな」
隣に腰掛けた悠が微笑む。同い年でこうも言動に差があると、わりとへこむ。
「あ、当たり前だろ。こんなの、初めてじゃなくたって慣れねーよ」
しかも自分から「はいどうぞ」と宣言してしまっているのだ。羞恥にまみれるのは不可抗力に等しい。
「そんなの、俺だって緊張してるよ? ほら」
手が悠の心臓に置かれた。確かに、表情からは信じられないほどに早鐘を打っている。
「……でも顔に出ないのはずるい。そんなに落ち着き払っててさ、やっぱりお前って同い年じゃないんじゃね?」
実は年齢詐欺じゃないのか?
「陽介にカッコイイとこ見せたいからだって、何でわからないかなー」
「わかるか! つかそれ以上カッコつけてどうす……あ」
今とんでもなく、恥ずかしいことを口走ってしまった気がする。一気に顔が熱くなってきた。
胸に置かれたままだった手を握りしめて、悠が距離を詰める。
……いよいよ、「その時」が来てしまったか。
「……ね、陽介。そろそろ俺、チョコ、食べたいな」
囁きを落とした目の前の男は、期待と欲とで溢れ返りそうな瞳をしていた。しかも無駄に輝いている。
――そんなにも素直な姿を見せられたら、素直になれない自分が格好悪いではないか。
ベッドに勢いよく倒れ、大の字を作る。固く目を閉じて叫んだ。
「ほ、ほらっ! 好きにしろよ!」
だが悠からのリアクションはない。おそるおそる目蓋を持ち上げると、非常に残念な表情とぶつかった。
「色気も何もない……」
そんな理由か。立っていたら確実に足の力が抜けていた。
「そ、そんなん俺に求めるなよ」
「でも、うん。むしろ陽介らしくていいかも」
「ムリヤリ納得させんなー?」
「いや、本当だよ? それによく見たら、陽介顔真っ赤で可愛いし」
「だっ、だからそういうのは言うなって!」
そのまま覆いかぶさってくる。両の指にするりと絡み付いてくる悠のそれに、思わず身を竦めてしまう。
「じゃあ、いただきます」
実に楽しそうに、悠が微笑んだ。
