「ほい、お菓子」
ぽんと、手元に小さな菓子の袋を置かれる。
完全に予想を裏切った展開に固まっていると、したり顔の陽介が手のひらを差し出してきた。
「Trick or Treat」
なに?
「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ? 相棒」
たっぷり時間をかけてパーに開かれた手を見つめたあと、とりあえずもらったお菓子をそこに乗せようとする。
「ってそれは反則だろ!」
……やっぱり駄目だったか。
いや、イタズラ回避も大事だが、先に理解すべきなのは陽介が自分と同じ作戦に出ようとしていることだ。
「なんで、って顔してるけど、当たり前だろ? 俺はお前の恋人なんだぜ?」
――考えていることは、お前と一緒だ。
ああ、完全に盲点だった。己の目的達成に精一杯過ぎてリスクを全く考えていなかった。
紙袋を指差して、陽介はにっこりと笑った。
「それに入ってんのコスプレ衣装だろ?」
ぎくり。
あからさまな動揺が、伝わってしまった。
「んじゃこれ、俺が使わせてもらうからな」
陽介の手に渡りそうになるのを必死に阻止しながら必死に首を振る。
「そ、それはお前に似合うだろうっていうのを想像しながら買ったやつだぞ!」
「大丈夫大丈夫。だって『イタズラ』だしな。似合わないのがむしろ正しいだろ?」
どうしよう。全く歯が立たない。
本気を出した陽介は本当に厄介だ。過去も幾度となく痛い目に遭ってきた。
今回もそのパターンだと言うのか!
「スキありぃ!」
あっけなく紙袋を取られる。奪い返そうと伸ばした手は空を切るどころか固く抱きしめ、いや拘束されてしまった。
「よ、陽介……!」
「観念しな? 相棒」
満面の笑顔が怖いと思ったのは多分初めてかも知れない。
