花主Ver - 4/4

 ふと目を覚ますと、視線のすぐ先に相棒の瞳があった。
「……起きてたの?」
「たまたま今、目が覚めた」
 悠はどこか機嫌が悪い。素直すぎる態度にむしろ可愛さを覚えるのは普段とのギャップのせいだろうか。
「腰が痛い」
「ごめん。無理させすぎた」
「菜々子に何か言われるかも知れない」
「そうなったら俺が頑張ってごまかすって」
 とうとう背中を向けてしまった。本気で怒っていないのはわかるが、拗ねるのはずるい。
「……もしお前が俺の立場だったら、俺みたいになってたかも知れねえんだろ?」
 予想通りだ。予想通り、返事がない。
 やっぱりだ、と突っ込みかけた声を慌てて飲み込む。確かにお互い様ではあったが、普段とまた違う悠を堪能できたのだ。それでよしとしておこう。
 腰に手を回す。黒毛のふわふわ感が全くないと思ったらソファの影に黒い塊を見つけた。こっそり洗う相棒の姿を想像して少しだけ申し訳ない気持ちになる。
「……来年は絶対負けないからな」
 特に拒まれなかったので引き寄せると、いきなり戦線布告された。
 というか来年も開催予定だったのか。
「はいはい。楽しみにしてますよ」
「そう余裕なのも今のうちだ」
「ほ、ほお。俺だって負けねーからな」
 ……冗談抜きで、本当に適わないかも知れない。
 心臓を無駄にどきどきさせつつ、固く目を閉じて睡魔を強引に引き寄せるのだった。