ゴールデンウィークはあっという間に終わりを迎えてしまった。
三月のあの日のように、駅のホームで悠を見送る。
次に会えるのは夏休みだろう。天城はまた、旅館に予約を入れておいてくれるらしい。
「今年は受験があるから、思いっきり遊べないのがほんっと辛いけどねー……」
この分だと、遊ぶだけでなく「みんな揃って受験勉強」メニューも組まれそうだ。いや、自分としてはその方がありがたい。ありがたいと思うようにしよう。
「お兄ちゃん。えっとね、お父さんがきをつけてって。あと、こんどはスイカわりできるようにおっきなスイカよういしておくって」
「そういえば菜々子ちゃん、去年すごくやりたがってたものね」
「へへ、楽しみがひとつ増えたぜ」
「クマも楽しみー!」
「菜々子もたのしみにしてるから……だから、まってるね!」
すでに泣きそうな笑顔の菜々子の頭を、悠は優しく撫でる。
電車の来る時間が迫ってきた。どうしてもこれだけは伝えておきたいと、一歩前に出る。
「ーー鳴上」
こちらの視線を受け止めた悠が、黙したまま視線を返してくる。
「お互い、頑張ろうぜ」
受験だけじゃない。
夢のために。改めて確認し合った誓いのために。
互いの、未来のために。
「ああ」
頷く悠の表情はいつも通りだが、わかる。確かに想いは通じたのだと、瞳が物語っている。
タイミングを図ったかのように電車が到着した。悠を乗せてすぐに発車しても、視界から外れるまで追い続ける。
夏休みに彼が戻ってきたら、びっくりせずにはいられないくらいの学力を身につけておいてやろうか。テストの順位にたとえれば、学年十位以内にでも入れれば十分だろう。
「さーって、帰ってベンキョーすっか!」
「あ、じゃあみんなで勉強会やろうよ勉強会!」
「げっ、みんなって俺らもッスか!?」
「おうよ! 旅は道連れじゃ」
「っぷ! ち、千枝、それすご、うま……!」
「雪子先輩、相変わらずね……」
「しかし休みが明けたらすぐ中間試験ありますし、勉強しておいた方がむしろいいかも知れませんね」
「ってマジ!? えええ、テンション下がるー……」
「りせちゃんたち、がんばれ!」
外に出た瞬間に映った空は、雲ひとつない青で染まっていた。
